福祉の心だけではやっていけない 

介護保険制度ができて3年後の2003年に、私は介護の世界で働き始めました。
この世界に入った時に感じたこと・・・


優しい人、若い人が多い。
介護とは、福祉とは、と理想を熱く語る人が多い。
利用者さんを中心に、ゆっくりと時間が流れている。


そこには、それまで私を悩ませてきた、売り上げ目標とか費用対効果という概念のない世界でした。

例えば、将棋の好きな利用者さんがデイサービスを利用された時のこと・・・
さす相手がいなかったので、職員さんが1日中、将棋の相手をされていました。それも週3日。

民間の企業から来た私にとって、福祉の世界って、これでやって行けちゃうんだ・・・
って、感心していました。

ある先輩が言っていました。
介護業界のいいとこって、数字やノルマに追われないとこだよ、って。
その方は介護保険制度ができる前の、いわゆる”措置”の時代から働かれている方でした。

しかし、そうではありませんでした。

あれから17年。
デイサービスや居宅介護支援を中心に、つぶれる事業所が増えています。
これからは特養もつぶれる時代です。

介護保険制度スタートにより、”措置”から”サービス”に変わりました。
それにより、事業者間の競争原理が働くようになりました。

民間事業者への門戸も開かれました。
介護をビジネスと割り切った事業者が多く参入しました。


介護保険の発足当時は、業界全体のパイを増やす必要がありました。
よって、報酬単価を高く設定し、事業への参入を促進したと言えます。

事業所を立ち上げれば、誰でも儲かる時期でした。
いわゆる”介護バブル”の時代です。

しかし、その状態は長くは続きませんでした。
3年ごとの報酬改定で、効率化・重点化の名のもと、報酬単価は確実に下がっています。

”だまされたー!”なんて思う方もいると思います。
しかし、おおむね予想できたこと、ではないでしょうか。
社会保障費が不足している現状で、介護だけ濡れ手に泡ってことないですよね。

そのような状況で、福祉の心だけで事業を運営することは難しい。
ボランティアではないのです。

介護サービスの原資は、公費や保険料、そして利用者さんの負担する費用です。
天から降ってくるものではないのです。
資本主義原理が働いているんです。

福祉の心がなければ、介護はできません。
しかしサービスである以上、経営という視点も不可欠だと思います

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